2009年5月19日火曜日

序章 とある絶滅動物について

「なにをR2見ているのだ?」
「《夜の主の印》夜主印(ヤシュイン)よ」呼びかけられた者は、非難の意味をこめて、相手勿上网游の本名とその短縮形を唱えて答えた。「リネ2 RMT rmt待ち合わせの時間はとうにすぎているぞ」

「すまぬ、すまぬ、許してくれ、《屈狸》の屈狸(クズリ)よ。興味深い書物を見つけてしまってな。つい夢中になってしまったのだ。それに、かれらが来るまでの時間はまだあるではないか」

 夜主印は、ほがらかな笑みを浮かべながら、屈狸のわきに立った。だが、屈狸は視線をそらすようにして、首をめぐらし、ふたたび展示品に目をもどした。

「この骨格標本がどうかしたのか」と、夜主印はたずねた。

 博物館の入口広間、可憐な蔓草が這いのぼる大円蓋の下、百合や鈴蘭(すずらん)などの白い花が植わった花壇に縁取られている円壇の上に、二本の足で直立した大猿の骨格が一組展示されていた。

「本物の《旧人》の骨を見るのは初めてだ」屈狸は感慨深げにつぶやいた。

「数百世紀前に絶滅した猿の仲間がそんなに珍しいのかね」と夜主印。

「猿? かれらは、われらの祖先だろう。その言い方は非礼ではないか」

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